2010年2月4日木曜日

[2月号]未来のリーダーシップ

タイトル
未来のリーダーシップ
Where Will We Find Tomorrow's Leaders?
 
著者
リンダ A. ヒル Linda A. Hill
 
掲載
Feburary, pp.134-137, 2010(in Japanese Edition)
 
序文
新興国経済に関心を抱き、研究を続けてきたリンダ A. ヒルは、「背後から指揮する」「集合天才としてのリーダーシップ」という概念を見出した。欧米流リーダーシップに限界を感じているならば、これらは、ぜひとも習得すべき新しいリーダーシップ能力をいえる。
 
要約
要するに・・・
仕事に打ち込める環境、様々な才能の集合体であるチームのメンバー全員が、状況に応じて「リーダー」を演じるような環境を用意すること。これば、「背後から指揮するリーダーシップ」。イノベーションを生み出すことをミッションとしたチームをマネージするリーダーにはそういった表に出ない、黒子となるようなリーダーシップが求められる。
 
 
感想
なかなかぴんと来ない話だが、ようするにお釈迦様の手のひらの上で、各人の得意分野を発揮できる場面で各人が適宜リーダーシップを取っていく姿をイメージするとよいということか。そして「お釈迦様の手のひら」となるのが「背後から指揮するリーダーシップ」。

[2月号]頼れるフォロワー困ったフォロワー

タイトル
頼れるフォロワー困ったフォロワー
What Every Leader Needs to Know About Followers
 
著者
バーバラ・ケラーマン
Barbara Kellerman
 
掲載
Feburary, pp.130-133, 2010 (in Japanese Edition)
 
序文
フォロワー(部下)の理解なくして、効果的なリーダーシップはありえない。彼ら、彼女らを、能力や業績で評価し分類する前に、その行動特性について分析し、能力やパフォーマンスを向上させる方法について考えるべきである。
 
要約
これまでフォロワーの研究はほとんどなされていないし、されてたものでも、リーダーの成長という観点からフォロワーの行動を説明しようとしているか、もしくはフォロワーは類型化できないという間違った仮定をしているかのどちらかである。このため、何も考えずにリーダーの言うままになっているフォロワーと、仕事にひたむきに取り組むフォロワーとの違いにほとんど気付かない。しかし、実際には、フォロワーの個性や持ち味は、リーダーのそれと同じくらい重要である。
 
そこで、フォロワーを「仕事にさめており、何もしない者」と「情熱をたぎらせ、仕事に貢献する者」を両端とした軸上に位置づけることを試みた。その結果として、フォロワーを以下の四つに類型化した。
  • 孤立者
    • 周囲の出来事や様子にまったくと言ってよいほど無頓着で、上司にも関心を示さず、何も知ろうとしない。表立った反応すら示さない。
    • 何にも係わろうとしないことで、現状を黙認し、リーダーの立場を強大化させる。
    • 孤立者はリーダーの死角に入っており、リーダーは孤立者の態度や行動にほとんど気付かない。
    • 孤立者が組織にもたらすものはほとんどない。また、このタイプが増えると意図しなくても組織の進歩や変革のブレーキとなる。
  • 傍観者
    • 周りの様子を見ているだけで自分では何もしない。
    • 状況を静観し、上司からもグループや組織からも距離を置きつつ、褒美にはありつこうとする。
    • 自分にとって得だと思えば、素直に追従するが、身を粉にしてまで働くという気持ちはまったくない。
    • 周囲の状況に対しては敏感。その感性で状況を観察しながら、「出る杭」にはけっしてなるまいと思って行動する。
    • 「言われた仕事だけをやってくれていればそれでよい」という考え方のマネジャーには都合が良いが、企業ミッションへの貢献を求める上司にとっては期待はずれ。
  • 参加者
    • リーダーや組織を強く支持する、あるいは逆に正面から反旗を翻すなど、みずからの時間や資金など、資源を投じて何らかの影響力を行使しようという気構えの持ち主
    • リーダーは全員に目を配り、特に自分に対して賛成と反対どちらの立場にあるのかを見極める必要がある。
  • 活動家
    • 参加者をより極端にしたもの。
    • 人の面倒見がよく、プロセスの改善にも献身的。信じるリーダーのためなら粉骨砕身するが、気に入らないリーダーの場合、足を引っ張ったり、追い出したりする。
    • それだけの情熱を傾ける以上、グループや組織への影響力も並々ならないものがある。能力の高い活動家は忠誠心に燃え、献身的に仕事に励むため、リーダーやマネジャーの片腕として取り立てられることが多い。
  • 硬骨漢
    • リーダーの魅力か組織の大儀か、あるいは、まったく別の価値観か、いずれに突き動かされているにせよ、あくまでおのれの動機にこだわる。
    • 一旦相手のほれ込んだり、大儀に心を動かされたりしたら全身全霊をもって尽くす。
    • リーダーにすれば心強い味方か、危険分子かのどちらかである。
当然ながら、何もしないフォロワーより、何かをするフォロワーのほうが好ましい。
優れたフォロワーは、仕事が出来て道徳観のあるリーダーに味方し、仕事が出来ず道徳心に乏しいリーダーに反発するものだ。彼ら彼女らはリーダーの実像とその主義主張を、自分なりにじっくり見極めようとする。その判断に基づいてしかるべき行動に出る。
無能なフォロワーは、グループにも組織全体にも全く貢献しない。あるいは、優れたリーダーの脚を引っ張り、無能なリーダーの片棒を担ぐ。
結局、フォロワーもリーダーと同じく、可能な限り自分の利益に沿った行動を取ろうとするものだ
 
感想
結論として、5つのパターンはなんとなく納得。人数配分としては、1:2:3:2:1とかかな?
フォロワーの研究、理想的な部下像の研究ってたしかにあまり見たことがない。
 
 

2010年2月1日月曜日

[2月号]本物のリーダーは社員と業績を秤にかけない

タイトル
本物のリーダーは社員と業績を秤にかけない
The Uncompromising Leader
 
著者
ラッセル A. アイゼンスタット  Russell A. Eisenstat
マイケル・ビアー Michael Beer
ナサニエル・フット Nathaniel Foote
トビアス・フレッドバーグ Tobias Fredberg
フレミング・ノーグレン Fleming Norrgren
 
掲載
Feburary, pp。126-129, 2010 (in Japanese Editon)
 
序文
株主や金融機関の顔色ばかり伺っている経営者は大抵社員をないがしろにし、その挙句、競争力を失う。むしろ社員の熱意と献身を引き出すことが、好業績の出発点である。
 
要約
「社員たちを大切にしながら優れた業績を上げて見せよう」という目標に基づいた組織マネジメントの在り方の提示。
  • 信頼を勝ち取る
    • 率直なコミュニケーションを通じて、相手に現実を伝える。
  • 社員と強い絆を築く
    • 涙ぐましい努力によって、社員たちとできる限りフィルターを通さずにコミュニケーションを取る。
  • 目標に焦点を絞る
    • 過去声だけでは行動は変らない。行動が変らなければ、何も変らない。行動を変えるためには、競争上の必要性を伝え、目標に焦点を絞ることである。
  • リーダー層全体の能力を上げる
    • 強力なリーダーシップを発揮して、全社の意識を課題に集中させる一方、管理者層のリーダーシップを育成し、その両方のリーダーシップのバランスを取って組織を運営する。
  • 共通の目的を掲げる
    • 結局、社員一人一人が目的意識を共有していなければならない。
    • 共同体意識や共通の目的意識を育み、社員たちの献身を引き出すという手法として、終身雇用や民族・文化の同質性に訴えかけ頼る方法では、もはや競争の激化するグローバル市場では勝ち抜けない。
    • 次の3つの誓いを柱としたマネジメントが必要
      • よりよい社会をつくろうとする社員たちの取り組みを後押しする。
      • 社員たちが誇りに思える業績を上げる
      • 社員たちが成長できる環境を提供する
感想
やはり、「共通目標」・「共通の価値観」・「目的の共有」が大切であると述べている。また、「目的の共有」を引き出すためには、その基本として、上記の3つの誓いが必要。これがなければ、「共通目標」を掲げ、声高に叫んだとしても、社員が聞き入れてくれない、ということ。

[2月号]新しい動機づけ理論

タイトル
新しい動機づけ理論
Employee Motivation: A Powerful New Model
 
著者
ニティン・ノーリア Nitin Nohria
ボリス・グロイスバーグ Boris Groysberg
リンダ=エリン・リー Linda-Eling Lee
 
掲載
Feburary, pp.120-124, 2010 (in Japanese Editon)
 
序文
神経科学や生物学など複数の領域を横断する学際研究のおかげで、ほとんど旧態依然となっていた「動機づけ理論」にも進歩がもたらされた。すなわち、モチベーションと人間の「欲動」の関係が明らかになり、ここから新たなフレームワークが導き出されたのである。
 
要約
人の本質的な欲動(Drive⇒フロイトの心理学)として、以下の4つがある。人はこれら4つの感情のニーズに駆られる。
  • 獲得への欲動
    • 社会的な地位なども含め希少なものを手に入れること。他者との比較に基づいた相対的なものであり、際限がない。
  • 絆への欲動
    • 個人や集団との結びつきを形成すること。満たされた場合には、愛情や思いやりなど前向きな感情を、満たされなかった場合には孤独感やアノミー(モラルの崩壊)など否定的な感情を惹き起す。
  • 理解への欲動
    • 好奇心を満たすことや自分の周りの世界をよく知ること。人は自分の取り巻く世界の意味を理解することを欲する。逆に、意味の無いことをしていると感じれば欲求不満を覚える。単調な仕事や、先の見えている仕事(「作業の奥深さ・底の浅さ」)だとモチベーションは下がる。
  • 防御への欲動
    • 外部の脅威からわが身を守り、正義を広めること。「闘争か逃走」。「わが身」とは肉体だけでなく、アイデンティティ、財産、業績、家族、ビジョンや信念もさす。
これらへの満足へのアプローチは以下の四つである。
  • 報酬制度
    • 成績の優秀なもの、平均的なもの、劣るものの間で、はっきり差をつける。
    • 業績連動型の報奨制度を導入
    • 優秀な人材に対してさらなる成長の機会を提供する。
  • 企業文化
    • 社員の間に信頼と友情を育む
    • 協力とチームワークを大事にする
    • ベスト・プラクティスの共有を奨励する
  • 職務設計
    • 社員にとって有意義で面白みとやりがいを感じられるような職務設計をする。
    • 社内で具体的かつ重要な役割を担うように職務設計する。
    • 組織に貢献しようという意識が高まるように職務設計する。
  • 業績管理と資源配分プロセス
    • 公正であることの重要性を強調する。
    • プロセスを「見える化」する。
    • 報奨や人事など業績評価において公正かつ透明性を保つことで信頼を築く
感想
「欲動」という概念的な部分に議論があるとは思うが、まあ、でもこれら四つが「モチベーションと絡んでいる」というのは、おそらく事実だろうと思う(研究成果で関連が示されているらしいので)。それへの対策はある程度は具体的。さてさて、ここで上げられている企業文化。どうやって行なうよ・・・。ここが一番難しそう。とにかく、人の「感情」と深く根ざしている。「友情・信頼・公正だと思う・面白いと感じる・有意義だと思う・組織に貢献しようと思う」さてさて、これらの感情をどう扱うべきか。

2010年1月29日金曜日

[2月号]Y理論は万能ではない

タイトル
Y理論は万能ではない
Beyond Theory Y
 
著者
ジェイ W. ローシェ
Jay W. Lorsch
ジョン J. モース
John J. Morse
 
掲載
Feburary, pp.114-119, 2010. (in Japanese Edition)
 
序文
ダグラス・マクレガーの「X理論とY理論」は必ずしも機能しない場合がある。業務と組織と人材がフィットした時に「センス・オブ・コンタンス」が高まり、パフォーマンスが高まるというコンティンジェンシー理論について説く。
 
要約
要するに、状況によってベストパフォーマンスを出せる社員像は変る。在るべきマネジメント方略も変る。「X理論・Y理論でY理論があるべき姿」と安直に考えてはいけない、という話。
 
業務と組織と人材の3つがフィットしている=センス・オブ・コンピテンスが高まる=組織のパフォーマンスが高まる
 
 
感想
1970年の論文だということを考慮しないといけないだろう。
固定的でルーティン化された作業においては、X理論に基づいた管理の方が良い。不定型でクリエイティブな作業においてはY理論の方が良い。
ただ、それとて程度がある。
結局、「どのような作業なのか」に見合った管理が必要だということ。
 

[2月号]MBO失敗の本質

タイトル
MBO失敗の本質
Management by Whose Objectives?
 
著者
ハリー・レビンソン
Harry Levinson
 
掲載
Feburary,pp.110-113, 2010 (in Japanese Edition)
 
序文
「目標管理制度」(MBO)は、ほとんどの組織で導入されているが、業績評価指標を過剰に重視したり、組織と個人の目標が乖離したりしていることがある。MBOを効果的に実践するための3条件とその前提と成る要素について解説する。
 
要約
要するに、MBOが失敗するパターンとしては、
社員のニーズ・ウォンツのことを考えず、会社の経営方針・市場へのコミットメントに基づいて現場の目標が設定され、それを結局社員に押し付けるというパターン。
ありがちな意見として、「経営陣の皆さんはわたしがかいしゃのもくひょうを実現する一方で、私自身が求めることにどれくらい支援してくれるのでしょうか」。
 
結局、人は、自分自身の個人的な目標の達成のために行動するときに最もモチベーションが生じる。(その個人的目標が組織が求めるものと合致している場合もあれば、合致していない場合もある)
 
あくまでMBOの目的は、社員の個人的ニーズ・ウォンツ・会社に対して求める事柄と、組織のニーズ・ウォンツ・個人にもどめる事柄を互いに出し合い、コミュニケーションを通じて、Win-Winとなるような目標を設定することである。それが、会社側も止める行動への社員のモチベーションを最も高めるための方法である。
 
MBOの実効性を高める3条件
(1)動機を検証する
(2)グループを単位とする
(3)評価者を評価する。(管理者⇒部下だけではなく、部下⇒管理者の評価)
 
 
感想
現状、うまく回っていないMBOは、目標をマネジメントしてるのではなく、目標をコントロールしている。(マネジメントは、支援的要素も含まれるが、コントロールでは支配的要素が中心となる)。文字通り「目標を管理している」。また、個人レベルにとどまっている。つまり、「個人の目標を管理している(支配している)」。本来あるべきは、「個人の目標をマネジメントすることという方法で、チームを管理すること」である。あくまで、MBOはチーム・マネジメントのための手段であることを忘れていはいけないだろう。

2010年1月28日木曜日

[2月号]ピグマリオン・マネジメント

タイトル
ピグマリオン・マネジメント
Pygmarion in Management
 
著者
J. スターリング・リビングストン
J. Sterling Livingston
 
掲載
Feburary, pp.106-109, 2010 (in Japanese Edition)
 
序文
教師の期待や働き掛けが生徒を伸ばすという発見はピグマリオン効果と呼ばれるが、マネジメントの現場でもやはり上司の期待と信頼が部下を育てるのだ。
 
要約
部下に寄せられた期待通りに(その期待が良い期待であれ、悪い期待であれ)、部下はパフォーマンスを出してくる。
こうなると良い期待をもて、悪い期待は持つな、という話になるが、それは難しい。悪い期待は生じるものだし、隠そうとしても、にじみ出てくるものだからだ。
また、マネジャーの期待が、部下が実現可能なもの出なければ、その期待はインセンティブにならない。
優秀なマネジャーは、まず第一に、自分自信の、部下を選抜し、訓練し、動機付ける能力に自信を持っている。部下たちをどのように信頼し、何に期待し、どのように教育訓練すればよいかと言った問題は、マネジャーが抱いている自身の程度に影響される。
 
ところで、ピグマリオン効果はスパイラルプロセスであり、その起点は入社1年目にある。この一年目において優秀なマネジャーと出会い、適切な期待をかけられていた場合には、そこからスパイラルプロセスが始まり、その後も継続して高い自己イメージを保持し、自分の仕事や雇い主にポジティブな姿勢を持つようにもなり、高いパフォーマンスを発揮する。しかし、実際には、新人の頃に付くのは、そこまで優秀なマネジャーではなく、まだ経験が浅く社内では全く力のないラインマネジャーである。その結果、自分の才能を伸ばしてもらえない、活用されていないことに気付き、やがて仕事や雇用主、自分自身の昇進に後ろ向きの姿勢を示すようになる。
 
産業界で最も大きな問題とは、結局、「最も価値の高い資源、すなわち若手社員やプロフェッショナルな才能を育成・活用することが遅れていること、またそれを管理・利用する能力がマネジャーたちに不足していること」である。
 
感想
期待と相互の信頼が必要だという話。
特に、相手に期待を持つためには自分自身に対しても期待感を持っていなければならない、という点は面白い。
まあ、これは期待というより有能感のことだなぁ。人を見抜くということへの有能感。
 
期待・信頼・有能感(自身への)。